税理士でも忘れやすい棚卸資産の調整とは?
棚卸資産の調整とは?
棚卸資産の調整とは、消費税で検討しなくてはならない重要なものです。
着目点
以下の着目点があります。
1.棚卸資産(在庫)があるかどうか?
2.来期の消費税は免税事業者?課税事業者?
この2点だけです。
簡単ですよね?
ところが申告時期は来期のことを考えることなく、
決算手続、申告書作成をやっているので税理士は
忘れやすい項目となっています。
どのような調整?
一体何を調整するのかというと・・・
1.今期:免税事業者→来季:課税事業者の場合
調整時期:来季の消費税の申告時
調整方法:今季の在庫の消費税を来期の消費税の控除額に上乗せ
2.今期:課税事業者→来季:免税事業者の場合
調整時期:今季の消費税の申告時
調整方法:今季の在庫の消費税を今期の消費税の控除額から控除
したがって、1の場合には、消費税の控除が多くなるので、
消費税の納付額は少なくなります。
対して、2の場合には、消費税の控除が少なくなるので、
消費税の納付額が多くなります。
この規定が存在する理由
なぜこのような規定が存在するのというと、
1の場合には、今期の在庫を使って、来期(課税事業者になった期間)に売上を
計上することになります。そうすると、今期の在庫は仕入れた時に、
消費税の控除を今期で受けていないにもかかわらず、消費税は納めないと
いけないということになります。
調整がないと仮定した場合の消費税計算は次の様になります。
売上108万円(消費税8万円)
在庫86.4万円(消費税0円)
納付額 8万円-0円=8万円(納付額)
これだと、損益的には21.6万円の利益になっているが、
消費税の計算上では、課税がいびつとなっている!
そこで・・・
在庫86.4万円(消費税6.4万円)として復活させよう!
8万円-6.4万円=1.6万円(納付額)
他の課税事業者と同様に課税が公平になった!
課税事業者から免税事業者となるのは、
上記の考え方の逆になります。
(消費税法36条)
実際の計算方法とは?
それでは、実際の計算方法を見ていきましょう!
今回は、最も忘れやすい時を想定して具体的に行います。
前提・・・
今期:免税事業者→来季:課税事業者の場合
したがって、来期の消費税の申告時を想定
売上2,160万円、経費1,728万円、在庫216万円
金額はすべて税込とします。
1.売上に係る消費税
①21,600,000×100÷108=20,000,000
②①×6.3%=1,260,000
2.経費に掛かる消費税
17,280,000×6.3÷108=1,008,000
3.棚卸資産に係る調整
2,160,000×6.3÷108=122,500
4.納付額計算(国税)
1,260,000ー(1,008,000+122,500)=129,500(100円未満切捨て)
5.地方消費税の計算
129,500×1.7×6.3=34,944→34,900(100円未満切捨て)
6.実際納付額
129,500+34,900=164,400円(納付額)
例えばですが、棚卸資産に係る調整を忘れると
今回であれば、122,500円(国税)と33,000円(地方税)
合計の155,500円納付額が増えてしまうことになります。
かなり大変な額です。
ちょっといいパソコンが購入できるレベルの金額に
なってしまうということになります。
参考サイト
ワンポイントアドバイス!
実務上の悩しい問題点として、所得税や法人税で
在庫の金額を決めている場合が多いので、
その在庫の金額をそのまま、消費税の計算にしても良いのか?
ということが考えられます。
これは、原価法により計算しているときは、
所得税や法人税で計算した金額を消費税で流用しても
良いことになっています。
ですから、改めて、消費税の計算だけのために在庫の金額を
計算する必要性はないということです。
(消費税法基本通達12-6-1)
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