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コロナウィルスによる業績悪化が見込まれた役員給与の減額を税理士が解説


業績の悪化が見込まれるためとは?

法人税法では役員給与について

業績悪化改定事由という概念があります。

 

業績悪化事由に該当すると役員報酬の減額が

期中であっても行うことができます。

 

問題は業績悪化の範囲が実務上で

判断が難しいところです。

 

また業績悪化という言葉にも

解釈の余地があります。

 

業績悪化が起こった状態に限定するのか

業績悪化が見込まれるときまで含むのか

ということになります。

 

上記の点、国税庁の新型コロナウィルス感染症

におけるQ&Aにおいて

 

新型コロナウィルス感染症により

経営環境が著しく悪化していると

考えて業績悪化改定事由に該当する旨

回答をしています。

 

 

業績の悪化が見込まれるために行う役員給与の減額

国税庁が公表している上記のQ&Aは

次のようになります。

 

当社は、新型コロナウイルス感染症の影響により、外国からの入国制限や外出自粛要請が行われたことで、主要な売上先である観光客等が減少しています。
そのため、当面の間は、これまでのような売上げが見込めないことから、営業時間の短縮や従業員の出勤調整といった事業活動を縮小する対策を講じています。
また、いつになれば、観光客等が元通りに回復するのかの見通しも立っておらず、今後、売上げが更に減少する可能性もあるため、更なる経費削減等の経営改善を図る必要が生じています。一方で、当社の従業員の雇用や給与を維持するため、急激なコストカットも困難であることから、当社の経営判断として、まずは役員給与の減額を行うことを検討しています。
しかしながら、法人税の取扱上、年度の中途で役員給与を減額した場合にその損金算入が認められるのは、経営が著しく悪化したことなど、やむを得ず減額せざるを得ない事情(業績悪化改定事由)がある場合に限られると聞いています。
そこで、当社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由による改定に該当するのでしょうか。

 

国税庁の回答としては次の4つから

結論を導き出しています。

 

①貴社が行う役員給与の減額改定について、現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、人や物の動きが停滞し、貴社が営業を行う地域では観光需要の著しい減少も見受けられるところです。

②また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、貴社の経営環境は著しく悪化しているものと考えられます。

③そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられます。

④したがって、貴社のような理由による役員給与の減額改定は、業績悪化改定事由(法人税法34条1項、2項、法人税法施行令69条1項1号ハ、5項2号)による改定に該当します。

 

上記を分かりやすくすると

①新型コロナウィルス感染拡大が防止されていない

②経営環境は悪化している

③役員給与の減額等をしなければ財務状況が悪化する

④以上のことから業績悪化改定事由に該当する

という流れになっています。

 

現行法令上の役員給与の規定は

経営者が自らの役員報酬を自由自在に操り

税負担を免れる可能性を防止する規制です。

 

つまり、客観的、不可避的な経営悪化の状況や

経営悪化が見込まれるときには業績悪化に

該当するという判断を国税庁が行ったと

考えることができます。

 

 

 

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