退職金があった場合の確定申告の判断とは?
退職金とは
会社を退職した場合には退職金が支給されることがあります。
退職金とはどのようなものかを確認していきましょう。
まず、退職金については一般的な法律上の定めはなく
退職金は必ず支給しなければならないものではありません。
労働基準法上は、退職金を定める場合には
以下のことを就業規則に定めることになります。
1.適用される労働者の範囲
2.退職金の決定、計算及び支払方法
3.退職金の支払時期について
それから、退職金が労働協約、就業規則、労働契約などにより
明確に定められて、労働者が権利として請求しうる場合には
退職金は労働基準法第11条の賃金に該当します。
従って、支給しない場合には、労働基準法第24条(賃金の全額払い)に
抵触することになります。
退職金があった場合の確定申告の判断
では、退職金があった場合には所得税で確定申告をする
ことになるのでしょうか?
確定申告をする判断基準を考えてみます。
結論を申し上げると
退職所得の受給に関する申告書を提出しているかどうかで
判断が分かれることになります。
退職所得の受給に関する申告書
こちらは、退職金の所得税及び住民税の計算をするときに
退職金を支給する会社に提出する書類です。
退職所得の受給に関する申告書を提出しないと
どうなるのかを確認しましょう!
退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合
前提:支給額が1,000万円
所得税:1,000万円×20.42%=2,042,000円
ということになります。
この場合には確定申告をすることになります。
なぜなら、退職金は所得税法上で退職所得になり申告分離として
計算することになるからです。
計算方法としては退職金のみで退職所得を計算して
退職金に対する所得税も計算する仕組みです。
結果として確定申告時点では次のような計算となります。
前提:退職金1,000万円、勤続年数20年の場合
(1)退職所得控除の計算
退職所得控除とは退職金から控除できる概算経費です。
次のような計算式に当てはめます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
前提の場合には、40万円×20=800万円となります。
(2)課税退職所得を計算する
課税退職所得は所得税率を乗じる金額です。
要するに所得税の対象となる金額です。
(1,000万円ー(1))×1/2=100万円
(3)退職所得に対する所得税を計算する
課税される所得金額に対する所得税は一定の区分により決まっています。
今回の場合には、100万円になるので、195万円以下となり5%と決まっています。
100万円×5%=5万円
(4)還付金額の計算
それでは先ほどの退職所得の受給に関する届出書を
提出しなかった税金を控除することで還付金額を計算します。
50,000円ー2,042,000円=-1,992,000円(還付額)
ということで確定申告することで
退職金の支給時に源泉徴収された金額のうち
確定した税額5万円以外の部分が還付となることになります。
退職所得の受給に関する申告書を提出すると
上記の計算を退職金の支給前に行うことになりますので
確定申告は不要となり、還付金額も発生しません。
(同じ計算を2度やっても同じだからです。)
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