消費税の増税と軽減税率の実務処理とは?
消費税の増税と軽減税率の実務処理とは?
この記事では、2019年10月1日以降に適用された
消費税の経理処理を解説します。
具体的には2つに分けて解説いたします。
①増税後の経理処理の注意ポイント
②軽減税率の経理処理の注意ポイント
消費税の増税の実務上の処理
2019年10月1日から消費税の税率が8%から
10%になりました。
実務の経理処理で重要なことは、次のことです。
①10月分の処理で9月に使った経費の精算
②会計ソフトの消費税のデフォルト設定
③②に伴う消費税の区分経理ミス
10月分の処理で9月に使った経費の精算
9月に使った経費の精算が10月に行われる
ということがあるはずです。
この時の消費税の税率は10%ではなく、
8%になります。
例えば、カード精算がありますね。
10月中旬くらいに8月~9月に使った経費が
口座引落により精算されます。
カード決済では使った都度の未払金計上ではなく
口座引落により経費を計上している会社、事業主が
多いと思われます。
ですから、カード明細で使った日にちを確認して、
経理処理をしませんと消費税の区分を間違えます。
会計ソフトは2019年10月以降において、
消費税の標準設定は10%になっているからです。
クラウド会計のMFは自分で消費税の設定をしないと
消費税のデフォルト設定は8%のままになっています。
API連携で明細取得し経理処理を行うといった場合だと
消費税の区分を自分で直して経理処理を行います。
会計ソフトのデフォルト設定
先ほども触れましたが2019年10月以降は、
消費税の区分がデフォルトで10%になっています。
実務上の経理処理で間違えるところは
8%の取引なのに10%で処理されて意識せずに
消費税の税率を間違えてしまうことです。
あくまで会計ソフトは入力する日にちで
消費税の設定が自動で適用されてしまいます。
過去5%から8%へのときにもありましたが、
リース取引がよく間違える取引です。
8%時代にリース取引を締結して、
賃貸借取引で処理をしている場合には
10%で処理を行うことはできません。
8%で締結した取引なのですから
リース料は8%の消費税の区分で処理をします。
工事などで完成工事基準で行っている場合も
消費税は要注意です。
2019年3月までに締結した取引は
2019年10月以降に完成したとしても8%で
売上の消費税を経理処理します。
ここまでは意識が働くのですが
外注先との契約はいかがでしょうか?
こちらも請負契約でやっている場合には
外注先からの請求も消費税は8%の処理となります。
逆に請負契約ではなくその都度の請求であれば
2019年10月以降の外注費は請求の通り10%で処理します
2019年4月以降に契約で2019年10月以降に
完成引渡しとなる工事については
2019年4月~9月までは消費税が8%で請求して
経理処理を行っていたと思います。
この点2019年10月以降に上記期間の2%の差額を
値増し金として請求するように言われると思います。
そうした場合には当然消費税は10%にて
消費税の経理処理を行うことになります。
細かいですが工事進行基準を適用している場合には、
値増し金は工事進行基準を適用する課税期間の末日の
消費税の税率になるとの見解が国税庁から出ています。
もし課税期間が2019年9月30日で工事進行基準を適用
しているとするならば、税率は8%で処理を行います。
消費税の軽減税率の実務上の処理
2019年10月以降は軽減税率が導入されました。
加えて消費税の増税に伴ってキャッシュレスの
ポイント還元もあります。
実務上の経理の現場では混乱が起きていると
思いますね。
ここからは問題を2つに切り分けて解説します。
①軽減税率と10%(以下、標準税率という)の混合取引
②ポイント還元の取引
軽減税率と標準税率の混合取引
実務上は、消費税の区分を分けて経理処理します。
言葉で申し上げると簡単なように思いますが
レシートだと以下の表記をきちんと確認します。
軽減税率の取引と標準税率の取引を確認します。
今回はセブンイレブンのレシートです。
*が付いているのが軽減税率となりまして
*が付いていないのは標準税率です。
さらに下の小計を確認しますと
軽減税率と標準税率ごとに金額がまとまっています。
小計では税抜での本体価格と消費税が別に表示され
さらに下の合計で税込の金額が表示されています。
経理処理上では税込金額で会計ソフトへ入力しますので
税込金額を確認したうえで入力することになります。
以上の確認をした後に次のように経理処理をします。
借方勘定科目 | 借方金額 | 借方消費税 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 貸方消費税 |
福利厚生費 | 729 | 軽減税率8% | 現金 | 729 | 対象外 |
交際費 | 545 | 課税仕入10% | 現金 | 545 | 対象外 |
このように処理を行っていきますね。
経理上の注意点を解説します。
会計ソフトだと標準税率がデフォルトになっています。
福利厚生費として処理した軽減税率部分は
必ず軽減税率8%の区分にして処理します。
というのは2019年9月も8%でありますが、
軽減税率の8%とは中身の税率が違います。
2019年10月以降の消費税の内訳表
税率区分 | 2019年9月までの8% | 標準税率 | 軽減税率 |
消費税 | 6.3% | 7.8% | 6.24% |
地方消費税 | 1.7% (消費税の17/63) | 2.2% (消費税のの22/78) | 1.76% (消費税の22/78) |
合計 | 8% | 10% | 8% |
(国税庁HPから作成)
このような状態となっていますから、
軽減税率なのに普通の8%で処理を行うと
消費税の計算が狂ってしまいます。
キャッシュレスの処理
先ほどのレシートをもう一度見ています。
レシートの合計欄の下にキャッシュレス還元額があり
ー26がありますね。
セブンイレブンは2%のキャッシュレス還元ですから
1,328円に対して26円のキャッシュレス還元をしました。
円未満の端数は切り捨てになります。
では、キャッシュレス還元の金額は
消費税の課税対象でしょうか?
私見ではありますが、消費税の課税対象とはならないと
考えています。
なぜなら、キャッシュレス還元事業で中小企業向けの
説明のリーフレットには、消費者へのポイント還元の原資も
国が負担しますと書いてあるからです。
私の理屈としては、
①会社側がポイント還元時にポイント還元のお金を支出
②①にて、消費者(会社も含む)がポイント受取
③①の負担分を国が補助金で穴埋め
というサイクルが出来上がっています。
そうすると、③が対価性がない取引なので
消費税の不課税取引となります。
①をもし課税取引とした場合には、
還元事業をやっている会社があまりにも有利になります。
なぜなら、お金は国から補助金で負担がないのに、
ポイント還元をすることで消費税の控除を受けられるからです。
②で消費税の課税取引にして①の会社の仕入税額控除の
穴埋めになるではないかと思われるかもしれませんが
それだとポイント還元事業者とポイント還元された方とで
支払税金が異なることになり、課税の平等性が侵害されます。
つまり、①の会社は支払っていない金額で消費税の控除をうけ
②の会社では支払金の減額で消費税の納付が発生する
いびつな課税計算となります。
特に①の計算が問題と私は考えています。
通常売上値引きと仕入値引きは金銭などの負担があって
初めて成立する取引ではないと思います。
とどのつまり、平等ではないということです。
従って、①と②について両方とも消費税の不課税取引にすれば
消費税の負担が公平となります。
ですから、不課税の取引になると思います。
では実際の取引の仕訳を先ほどの仕訳にプラスして
完全な処理として解説していきます。
借方勘定科目 | 借方金額 | 借方消費税 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 貸方消費税 |
福利厚生費 | 729 | 軽減税率8% | 現金 | 729 | 対象外 |
交際費 | 545 | 課税仕入10% | 現金 | 545 | 対象外 |
現金 | 26 | 対象外 | 雑収入 | 26 | 対象外 |
このように処理することができます。
それからここからも私見としての処理を解説します。
26円の処理をする必要があるのか?です。
実務上26円のような少額の取引をしなくても
全く問題がないように思います。
逆に金額が大きくなれば雑収入で計上しないと
問題が出てくるものと思います。
私の関与先への指針ですがキャッシュレス還元は
処理しないこととして合意しています。
ただ、税理士ごとに考え方はことなりますので
顧問税理士との処理のすり合わせはして
会社の対応を考えておく必要があると思います。
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