【令和5年度マルサの調査結果】国税庁公表資料の解説
令和5年度の査察概要
通称マルサという査察部隊がいます。
マルサは不正事案について査察を
行って検察庁へ告発を行います。
令和5年度分で検察庁へ告発した件数は
101件になり、この分の脱税総額は89億円でした。
マルサが検察庁へ告発した事案では
・消費税の不正還付事案
・無申告による不正事案
・国際的な不正事案
・社会的波及効果の高い不正事案
といったものでした。
検察庁へ告発した事案では83件で
有罪判決が言い渡されて9人に対して
実刑判決となったようです。
消費税の不正事案
近年、国税庁では免税店を利用した
不正還付に力を入れています。
すでに消費税法上の措置は完了しており
令和5年度では消費税法の改正前で
以下のような不正事案があったようです。
取引は
①納税者が共謀者から高級腕時計を仕入れる
②納税者は外国人旅行者へ高級腕時計を売る
③納税者が消費税の還付申告をする
です。
どこが不正事案になったのかというと
同一の高級腕時計のシリアルナンバーや
不正に入手したパスポートを用いて
書類を偽造して架空の取引を行って
消費税の還付申告をしていたというものです。
上記の取引で架空となっているところは
①と②になります。
①で架空の仕入れを行って②で架空の
売上を計上します。
消費税の計算上では
①の仕入で消費税を支払ったことになり
②の売上で消費税はゼロになるため
①の仕入で支払ったと架空計上した
消費税の還付を行っていたという取引です。
現実では、①の仕入で実際にお金を支払
②の売上は架空なので①からキックバックを
受けてお金を足して売上金としていたと
想像します。
要するに利益部分は自分の財布から
お金を出していたのでしょうが
還付申告により支払ってもいない
お金が戻ってくるので痛くも痒くもない
取引だったと考えられます。
無申告や社会的波及効果の高い不正事案
無申告事案では次の3つが
公表されています。
やり方は隠ぺいによる脱税でした。
①アフィリエイト
り収入を得ていたにもかかわらず、虚偽のコンサルティング契約書を準備するなどして
所得を隠匿した上で、法人税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ
法人税を免れていた。
②タトゥースタジオ
自らタトゥーの施術を行うことで収入を得ていたにもかかわらず
知人や親族名義の預金口座を使用して所得を隠匿した上で
所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ
所得税を免れていた。
③確定申告しない
所得税の確定申告書を提出しないまま法定納期限を徒過させ
出版社からの原稿料や印税収入などに係る所得税を免れていた。
共通点は収入を得ているのに
何かしたの方法で収入がないようにして
確定申告もしていないということです。
おそらく、開業届も提出していないので
バレないと思ったのだと考えられます。
国税庁では民間からの情報を集める
ことができるものがあるため第三者からの
密告で動くことがあり得ます。
社会的波及効果の高い事案は
8つの事案が公表されています。
①脱税請負人が、脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税とうたって
広く納税者を勧誘し、納税者らが当該スキームを利用して法人税及び消費税を免れていた。②インターネット上の物品の転売やそのノウハウの指南を業とする者が
架空の経費の計上や売上を除外することで、自身の所得税及び主宰法人の法人税を免れていた。③半導体製造工場の建設が盛んな地域における工場内設備工事事業者が
架空の経費を計上することで、法人税及び消費税を免れていた。④コロナ禍におけるペット需要の高まりを受けたブリーダー業を営む者が
架空の経費を計上することで、所得税を免れていた。⑤医療法人、医薬品製造会社、医療コンサルタント事業者が法人税等を免れていた事案
⑥太陽光発電設備に関連する事業者が法人税等を免れていた事案
⑦果樹園農家が所得税等を免れていた事案
⑧相続財産の現金及び名義預金を申告から除外することで、相続税を免れていた事案
おおむね税金を減らすためには
売上を隠すことと経費を水増しすること
で利益を少なくするように見せかける
ことが多いです。
ですから、売上の隠ぺいや架空経費の
計上といった共通点を見ることができます。
因みに、相続財産の現金や名義預金は
隠したという事実がないと認定できません。
相続財産から漏れたというのと
隠したのでは雲泥の差があるのです。
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