海外居住親族の扶養控除の適用の改正【令和2年税制改正大綱】
海外居住親族の扶養控除改正
令和2年税制改正大綱では海外居住親族の
扶養控除の適用について見直し案が出ました。
改正の内容
内容は次のようになります。
日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用について次の措置を講ずる。
①非居住者である親族に係る扶養控除の範囲から、年齢30歳以上70歳未満のものであって、次のいずれにも該当しない者を除外する。
イ 留学により非居住者となった者
ロ 障害者
ハ その居住者からその年における生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けいている者
現状では、海外送金額等に金額制限はないものの
今後の改正では海外送金額等の制限が出てきます。
私が関与しているところでは送金明細の確保と
家族関係証明書の提出で海外親族に扶養控除を適用し
年末調整を行っています。
今後は送金額への説明を会社が従業員へ行い
理解を求めることになりそうです。
②年齢30歳以上70歳未満の非居住者であって上記①イ又はハに該当する者に係る扶養控除の適用を受けようする居住者は給料若しくは公的年金等の源泉徴収、給与等の年末調整又は確定申告の際に、上記①イ又はハに該当する者であることを明らかにする書類を提出等し、又は提示しなければならない。
こちらは現在もある家族関係証明書を
さらに拡大した書類の要件となりそうです。
上記①イとは留学により非居住者となった者
ということになります。
ですから日本から海外へ留学に行って
日本の居住者でなくなった人が対象です。
必要とされる書類等
(注1)上記①イに該当する者であることを明らかにする書類は外国政府又は外国の地方公共団体が発行した留学の在留資格に相当する資格をもって留学する者であることを書する書類とし、上記①ハに該当する者であることを明らかにする書類は現行の送金関係書類でその送金額が38万円以上であることを明らかにする書類とする。
上記①イは留学生ですから留学ビザなどで
留学していることを証明することになります。
上記①ハは送金関係書類ですが現行の規定に
変更を加えるわけではないです。
現行の銀行が発行する送金明細や
家族カードのクレジットカード明細でも
提出書類の要件はクリアーすることになります。
(注2)上記の改正は、令和5年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに令和5年以後の所得税について適用する。
以上、自由民主党の令和2年税制改正大綱資料より
引用を行いました。
令和5年までの税務調査でのリスク
今後に発生すると考えることができる
税務調査リスクについてです。
まず、送金額についての詳細な確認が
従業員に行われる可能性があります。
知り合いの税理士の関与先での調査では
海外の居住親族について送金の確認が行われて
送金額を38万円で切って扶養親族とする事例が
ありましたね。
扶養親族とするには生計を一にする(せいけいをいつにすると読みます。)
であることが要件とされています。
生計を一にする意義としては国税庁のホームページにて
同居をしていなくても常に生活費などを送金している
という場合も該当することになります。
海外居住親族だと常に生活費を送ることで
生計を一にするということになります。
先ほどの例では「常に」の部分を38万円で区切って
38万円以下の送金では生計を一にするとは認めず
扶養控除の是否認となったと考えることができます。
令和5年までは送金金額の要件はなく
一度でも送金等した事実を証明する書類があれば
海外居住親族を扶養控除の対象とすることが
可能ではあります。
しかし、「生計を一にする」という部分の判断は
調査官の裁量となるリスクが現行でも存在します。
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この記事は、この記事を作成してる時点の法令に基づき
書かれています。法令に改正があった場合には、現在の
取り扱いとは違った取り扱いになる可能性があります。