TAX

自社の都合で債務免除すると寄附金になる!?


債務免除とは?

実務上、出くわすのが会社が勝手に売掛金を債務免除するということです。

よくよく聞いてみると、得意先がここ何年間か全く支払ってくれいないとのこと。

だから、債務免除ということで、相手に書面で通知して貸倒損失にしたということです。

 

まず税務は私法上の判断からのあてはめを

行うことになっています。

債権ですから、この場合には、民法ということになります。

 

民法では、このような債権を払ってくれいことを

債務不履行といいます。

債務不履行は、次の3つの種類に分類されます。

・履行遅延(払えるのに払う期間が過ぎた)

・履行不能(後発的に払えなくなった)

・不完全履行(債権の一部は払ったが、まだ残っている)

 

債権の金額にもよるのですが、内容証明、支払督促などを行い、

それでもだめなら少額訴訟をするということになります。

 

 

なぜ寄附金になるのか?

税法上は、上記の会社の様に自己の判断で債権を免除した場合には、

原則、寄附金として扱われます。

 

法人税法上の寄附金とは?(法人税法37条)

(寄附金の計算方法)
内国法人が各事業年度において支出した寄附金の額の合計額のうち、
その内国法人のその事業年度終了の時の資本金等の額又は
その事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより
計算した金額を超える部分の金額は、その内国法人の各事業年度の
所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

→この規定により、寄附金になると費用にならない部分が出てきます。
つまり、法人税の計算上は寄附金の金額の一部又は全部が否認されます。

(寄附金の意義)
寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもつてするかを問わず、
内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(中略)
をした場合におけるその金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額
又はその経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。

→この規定により、どのような名目は問わず、金銭の贈与などは、贈与時点の金額で
寄附金の金額になるということです。

 

まとめると・・・

会社が勝手に自社の売掛金を債務免除するとの通知を相手方にすると

金銭の贈与になるので、寄附金課税になるということです。

債権の放棄を行うと民法549条により贈与となります。

 

 

寄附金にしないための貸倒損失の要件は?

では、寄附金にしないためにはどうすればよいのでしょうか?

税法上、貸倒損失として認められているのは、以下の3つだけです。

1.法人税法基本通達9-6-1(法律的に債権が切捨てられた場合)

2.法人税法基本通達9-6-2(事実上の貸倒)

3.法人税法基本通達9-6-3(一定期間取引停止後弁済がない場合)

 

この中で、私が実務上よく使うのが、9-6-1です。

9-6-1では、債務者の債務超過の状態が相当期間継続しており弁済が
不可能であれると認められ、債権の放棄を書面で債務者に通知している場合

→実務上でこれを運用する場合には、債務者が夜逃げして会社にいない場合に
わざと内容証明を出して、その内容証明が届かなかったことを理由として
9-6-1を運用するパターンです。

この方法を使うには以下の様な要件があります。

(1)債務者はすでにいなくなっている(どこに行ったか不明)

(2)そのいなくなった場所に内容証明郵便を送付し、それが自社に帰ってくること

注意すべきは、内容証明が自社に帰ってくる時期です。

決算末日までに送付した内容証明が自社にあて先不在で帰ってこないと

当期の損失として費用にできなくなります。

 

実務上、一番使ってはいけないのが9-6-2です。

この通達は回収不能を証明すればよいとのことで簡単だと

思うかもしれませんが、債権の全部を回収不能だと証明しなければ

ならず、かなりハードルが高い運用となります。

 

9-6-3は以下の要件が揃えば、運用できます。

①債務者との取引を停止してから1年以上経過した場合

②同一地域の債権者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく
支払を催促しても弁済がない場合

こういった場合には、備忘価額1円を残してすべて貸倒損失になります。

備忘価額1円を残さない経理をすると全額費用として認められません。

 

参考サイト:https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_06_01.htm

 

この記事は、この記事を作成してる時点の法令に基づき

書かれています。法令に改正があった場合には、現在の

取り扱いとは違った取り扱いになる可能性があります。