【賃上げと賃上げ促進税制の関係】中小企業の適用はこうすればすぐ使える【改正対応版】
賃上げ率はいくらにすれば使えるのか
賃上げ促進税制は令和5年
税制改正により改正されました。
適用可能な事業年度は
令和6年4月1日~令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度
になります。
実務上では最短で令和7年3月決算
から適用開始になります。
税法上での中小企業とは
資本金1億円以下の法人
になります。
賃上げ促進税制は税控除です。
税控除対象金額は次のように計算します。
(当期の給与総額-前期の給与総額)×税額控除率
税額控除率は次のように
なります。
給与等支給額(前年度比) | 税控除率 |
1.5%増加 | 15% |
2.5%増加 | 30% |
具体的には
①前期の給与総額1千万円
②当期の給与総額1.2千万円
③200万円÷1千万円=20%≧2.5% ∴適用あり
④(②-①)×30%=60万円の税控除
となり、法人税は60万円減ります。
ただし、法人税の20%までが上限
になっているため
法人税×20%と60万円と比べていずれか
小さいほうの金額が税控除額になります。
以上が原則の控除率になりますが
上乗せ措置があります。
教育訓練費を前年度比5%以上増加
をした場合で税控除率が10%アップし
くるみん又はえるぼし二段階目以上
の認定を受けることでさらに5%アップします。
1.5%の給与増加で税控除率は15%
のところ、教育訓練費の増加で25%になり
くるみん又はえるぼし二段階目以上の
認定で30%になります。
くるみん又はえるぼし二段階目以上の
認定は中小企業にとっては難しい場合が
あるかもしれませんので
現実では給与を2.5%のアップを目指し
さらに教育訓練費を5%増加を目指す
ことになると考えます。
赤字であっても適用するメリット
賃上げ促進税制の改正では
さらに控除しきれない税控除額は
翌期以降5年間繰越できる制度に
なりました。
今までは使えなかった税控除額は
切り捨てになっていたところ
今後は、翌事業年度以降でも
税控除を持ち越しして使える
制度になりました。
以上のことから一般的には赤字で
あったとしても翌年以降5年間で
黒字になることを考慮し
赤字であっても賃上げ促進税制を
計算して繰越しておく必要があります。
イメージとしては
①令和7年3月期は赤字だが賃上げ促進税制の控除額45万円あった
②令和8年3月期で法人税が300万円あった
このような場合には、①で控除できなかった
45万万円を②に持ち越しして
本来であれば支払うはずだった
300万円から45万円を控除します。
因みに、黒字であっても法人税の20%
の上限に引っかかって控除しきれない
金額はどうなるのかというと
控除しきれない金額も翌期以降
5年間繰越可能なのでこちらも
切り捨てはなくなります。
実務上では、赤字、黒字に関係なく
賃上げ促進税制を適用して計算し
確定申告で申告を行っておく
ことになりました。
賃上げしなくても適用可能かも
中小企業では賃上げしなくても
賃上げ促進税制は使える可能性があります。
中小企業向けの賃上げ促進税制
の対象給与は全雇用者の給与等支給額
になっています。
少し前までは継続雇用者給与等支給額
という名称で前期と当期の2事業年度いる
従業員への給与が対象だったのですが
全雇用者となっているため次のような
場合であっても賃上げ促進税制の
対象給与になります。
①令和6年3月期の給与等支給額が1千万円
②令和7年中に一人雇い入れて令和7年3月期
の給与等支給額が1060万円になった
この場合であっても、令和7年3月期では
2.5%以上の増加になっている計算なので
賃上げ促進税制の適用ができる
ということになります。
要するに、前期からいる従業員だけの
ための制度ではなくなったわけです。
前期から最低でも1.5%以上の増加した
給与にしさえすれば賃上げ促進税制は
適用可能になります。
言い換えると従業員の入れ替えで
給与の総額が減ったとしても
決算賞与を従業員へ支給するなど
して適用対象になる増加割合を
満たせばよいのです。
結果、新たに雇い入れるとか
決算賞与で給与総額をいじる
とかといった調整が簡単にできる
ようになった制度です。
公式ブログはこちら(平日毎日更新中)
この記事は、この記事を作成してる時点の法令に基づき
書かれています。法令に改正があった場合には、現在の
取り扱いとは違った取り扱いになる可能性があります。
また、当記事についてのご質問はお受けしておりません。
個別的なご質問は以下の
からご依頼頂けると幸いです。