相続税・贈与税

【相続時精算課税の改正】災害があった場合の特例措置を解説


災害があった場合の特例措置の創設の意図

令和5年税制改正により

相続時精算課税の適用を受けている人が

 

災害にあった場合には災害による損失分を

加味した金額に評価を減額できる制度が

創設されました。

 

相続時精算課税制度の相続のときの

取り扱いが災害時に問題とされてきました。

 

というのは、相続時精算課税で贈与された

財産は贈与の時の価額で相続税の計算に

取り込まれる仕組みです。

 

一般的なメリットは贈与から相続までの

間に金額が上がる財産について

相続時精算課税で先に贈与しておけば

 

相続の時の価額よりも贈与の時の価額

のほうが低く済むため相続税の負担を減らす

ことができるという点でした。

 

ただ、現実問題として贈与のあとに

贈与された財産が災害により修復できないとか

使えなくなるとかといった場合であっても

 

相続の時には贈与の時の価額で相続税を

計算しなければならないといった問題点が

継続してきました。

 

今回の相続時精算課税に係る

土地又は建物の価額の特例の創設が

行われることで

 

いままでは贈与の時の価額で相続税の

計算をしなければならなかったものが

 

災害により使えなくなった部分の金額を

差し引いて相続税の計算に取り込まれる

ことができるようになりました。

 

 

災害があった場合の特例措置とは

適用対象者

相続時精算課税適用者

 

対象財産

特定贈与者から贈与により取得した土地又は
建物について令和6年1月1日以後に災害によって
一定の被害を受けた場合

 

対象期間

贈与の日からその特定贈与者の死亡に係る
相続税の提出期限までの間

 

相続税に取り込まれる金額

その贈与の時の価額からその災害に被災価額を
控除した残額

 

時系列として解説すると

①相続時精算課税で贈与を受けた

②令和6年1月1日以後の災害があった

③特定贈与者の死亡があり相続税の申告書を提出するに至った

 

現実で申し上げると特定贈与者の死亡

による相続税の提出期限が

令和5年12月31日前であるとか

 

令和5年12月31日以前に災害があって

そのあとに特定贈与者が死亡したといった

場合には、今回の特例制度は使えないです。

 

なぜなら、対象となる災害が令和6年1月1日

以後に起こっていないといけませんし

 

相続税の申告書の提出期限が

令和6年1月1日以後に起こった

災害の後でないと特例の要件に

ならないためです。

 

 

 

 

災害があった場合の特例措置の細かな内容

災害が何をもって災害というのか

の判断をしなければなりません。

 

災害とは

震災、風水害、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び
火災、鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫
害獣その他の生物による異常な災害をいいます。

国税庁 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらましから抜粋

イメージとしては自然災害に分類される

災害になります。

 

災害があった場合の特例措置を受ける

ためにはただの災害が起こったからという

理由だけでは使えません。

 

災害→一定の被害を受ける必要があります。

一定の災害とは

その土地の贈与時の価額又はその建物の想定価額(注1)のうちに
その土地又は建物の被災価額(注2)の占める割合が10%以上となる
被害をいいます。

(注1) 想定価額とは、その建物の災害発生日における一定の算式により求めた価額をいいます。

(注2) 被災価額とは、被害額から保険金などにより補塡される金額を差し引いた金額をいい
その土地の贈与時の価額又はその建物の想定価額を限度とします。

国税庁 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらましから抜粋

 

想定価額の計算はざっくり解説すると

贈与の時の価額×(想定の使用年数ー贈与日から災害発生日までの年数)÷想定の使用年数

 

つまり、災害がなかったとしたら

災害後も使えるであろう年数分の

割合が想定価額になります。

 

被災価額については

建物の場合は想定価額が上限なり

土地の場合贈与の時の価額が上限です。

 

ただし、被災価額の計算は次のように

行われることになっています。

被害を受けた部分の価額(原状回復費用など)から保険金、損害賠償金
その他これらに類するもの(以下「保険金等」という。)により補塡される金額を控除した金額

 

これはおそらく災害により使えなく

なった部分を計算することが困難なので

 

被害を受けた部分を復旧する金額が

被災価額の基礎になり

 

地震保険や損害賠償請求で補填される

金額を控除することにより計算する考え方

を取っているものと考えます。

 

イメージとしては東日本大震災のときには

災害により原発事故が起きて住めなくなった

ことによる被害価額も考慮されていると

考えられます。

 

上記で計算して想定価額の10%以上の

被害価額になった場合にはようやく

本特例制度の適用ができます。

 

特例計算と相続時の計算の取り込み

イメージは次のようになります。

 

①贈与の時の価額:2000万円

②災害時:想定価額が1600万円、被災価額が300万円

③相続時:2000-300=1700万円

1700万円が相続のときに計算で

取り込まれる財産の価額になります。

 

 

 

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この記事は、この記事を作成してる時点の法令に基づき

書かれています。法令に改正があった場合には、現在の

取り扱いとは違った取り扱いになる可能性があります。

 

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