【収益認識による会計基準を会計と法人税から解説】会計基準、法人税、消費税の側面から具体例を見てみる!
収益認識による取り扱いについて概要
国際会計基準では2018年1月1日から強制適用となる
収益認識による会計基準については、
連結財務諸表を作るような上場会社が
対象となっています。
中小企業(監査対象法人以外)については、
従前の企業会計原則による会計処理も可能です。
したがって、中小企業で、監査対象法人以外は、
収益認識による会計基準の適用をしなくても大丈夫です。
日本における適用開始時期は、
2018年4月1日以後開始する事業年度から適用可能
2018年12月31日以後終了する事業年度から適用可能
これらは、早期適用の開始時期です。
強制適用となる時期は、
2021年4月1日以後開始する事業年度から強制されます。
収益認識による会計基準は、
顧客との契約から生ずる収益に関する会計処理及び
開示についての適用となります。
いかの取引は不適用となっています。
・金融商品会計基準
・リース会計基準
・保険法における保険契約
・同業他社との交換取引
・金融商品の組成などの手数料
・不動産流動化実務指針の対象となる不動産の譲渡
収益認識による会計基準の収益を認識するための
5つのステップがあります。
・ステップ1:顧客との契約を識別
・ステップ2:契約における履行義務(収益認識の単位)を識別
・ステップ3:取引価格の算定
⇒値引き、リベート、返金等、取引の対価に変動制のある金額が
含まれる場合は、その変動部分の金額を見積もり、増減させて取引価格を算定
・ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分
・ステップ5:履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識
ただし、割賦販売における割賦基準に基づく収益認識は認められない。
上記をステップごとに分けると以下のようになります。
前提:商品と保守契約、契約期間2年、契約金額12,000円
・ステップ1:契約書の締結(契約)をすること
・ステップ2:履行の単位を識別するので、
商品の引き渡し履行、保守の履行を分けて考える
・ステップ3:取引価格の算定
リベート等がないことから12,000円を取引価格の算定とする
・ステップ4:取引価格を分けるので、
商品を10,000円、保守を2,000円に分ける。
・ステップ5:収益を認識する
商品は引き渡しなので、今期で10,000円の収益
保守は、2年契約としているので、今期は1,000円の収益
現実としては、ステップ4は契約時に金額を分けて
いないと分けることが難しいと考えられます。
商慣行上、取引として分けられていると思います。
法人税法における考え方
従前は、法人税法22条2項の益金の額と
同条の4項の公正処理基準の対応で行っていました。
今回、収益認識による会計基準により、
法人税では、法人税法22条の2の創設を行い、
収益認識(法人税法の益金)ダブルスタンダードを
法人税に取り込むこととしています。
法人税法22条の2第1-3項で収益の計上時期を規定、
同条第4-5項で収益の計上額を規定
同条第6項で現物配当を規定
同条第7項で後発事象の金額変動を政令委任
といった区分と立て付けとなっています。
それぞれ、見ていくと以上のようになっています。
条文の一部抜粋により、解説します。
・第1項について(原則規定)
原則として、収益の計上時期は、
目的物の引渡し又は役務提供の日の属する事業年度とする
つまり、原則的な収益の計上時期を規定しています。
・第2項について(公正処理基準の明確化)
公正処理基準に従って、引渡し等の日に近接する日の属する
事業年度の確定決算で収益経理することも認められる。
つまり、委託販売の仕切り精算書基準や、契約書基準でも
収益の計上を行ってよいこととなります。
・第3項について(益金の申告調整について)
収益の額を近接する日の属する事業年度において
申告することも認められる。
ただし、引渡し等の日または近接する日の属する事業年度
において収益経理している場合には、申告調整により
これらの日以外の属する事業年度の益金に算入することができない
つまり、申告調整は収益の経理をしていない場合に限り
みとめられるということになっている。
・第4項について(価格の算定について)
販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額
又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する
金額とは、一般的には第三者間で通常付される金額をいう
これによって、値引きなどの譲渡資産の時価をより正確に
反映させるための調整となっています。
つまり、値引きや割り戻しも考慮して良いということです。
・第5項について(見積もり計上不可規定)
引渡しの時における価額又は通常得べき対価の額には、
貸倒や返品の可能性がある場合においてもその影響を
織り込むことはできない。
収益認識による会計基準では、回収不能額等を見積もるが
その見積もった金額を収益から除くことはできないことを
明確にしている。
・第6項について(現物配当の収益課税)
無償による資産の譲渡にかかる収益の額には、
現物配当等による資産の譲渡にかかる収益の額が含まれる。
つまり、現物配当等は資産の譲渡と利益配分の混合取引だが、
キャピタルゲインとして課税の対象となることを明確化している。
・第7項について(後発事象の政令委任)
値引きや割り戻しによる譲渡資産等の事後的な変動について
修正経理を行った事業年度の損益に算入する等の処理について
政令に委任
つまり、事後的な変動については、法人税法施行令にて
規定されている。
ここから読み取れるのは、
収益認識による会計基準と法人税の差が出てくるのは、
貸倒等の不確定要素を収益の額に反映させて、
収益の経理をした場合に現れると思われる。
その場合には、申告調整によって、
法人税の確定申告書を作成することとなる。
具体例を解説してみる
自社ポイントを付与している場合
前提:ポイントは販売価格の10%、ポイントで購入時はポイントは付さない
消費税は8%とする。
10,800円で商品を販売した場合(売り手)
借方 | 貸方 | 法人税の取扱い | 消費税の取扱い |
現金10,800円 | 売上9,025円*1 | 同じ | 売上の対価10,000円 |
ポイント負債975円*2 | 売上の消費税800円 | ||
仮受消費税800円 |
*1:10,000×10,000/(10,000+1,080)=9,025円
*2:10,000×1,080/(10,000+1,080)=975円
10,800円で商品を販売した場合(買い手)
借方 | 貸方 | 法人税の取扱い | 消費税の取扱い |
仕入10,000円 | 現金10,800円 | 同じ | 仕入の対価10,000円 |
仮払消費税800円 | 仕入の消費税800円 |
ポイントで商品を購入した場合(売り手のみ処理がある)
借方 | 貸方 | 法人税の取扱い | 消費税の取扱い |
ポイント負債975円 | 売上975円 | 同じ | 売上が1,080円 |
返品が1,080円 |
消費税は、売上があり、その分返品があったと考えるので、
消費税では両建て処理となる。つまり、ポイント売上時には消費税は課税されない。
返品権付販売
前提:商品200円(原価120円)を100個販売し、2個返品があると想定できるケース
売り手の場合(会計)
借方 | 貸方 | 消費税の取扱い |
現金21,600円 | 売上19,600円 | 売上の対価20,000円 |
返品負債400円 | 売上の消費税1,600円 | |
仮受消費税1,600円 | ||
売上原価11,760円 | 商品12,000円 | |
仮払消費税240円 |
売り手の場合(法人税の取扱い)
借方 | 貸方 |
現金21,600円 | 売上20,000円 |
仮受消費税1,600円 | |
売上原価12,000円 | 商品12,000円 |
返品調整引当金の経過措置終了後の取引を前提としている。
ここで注目すべきは、会計上の売上と法人税法上の売上が
異なる点にある。
この場合には、申告調整をすることとなる。
買い手の場合
借方 | 貸方 | 法人税の取扱い | 消費税の取扱い |
仕入20,000円 | 現金21,600円 | 同じ | 仕入の対価20,000円 |
仮払消費税1,600円 | 仕入の消費税1,600円 |
以上は、国税庁の平成30年5月の資料により具体例として、
上がっていたものを一部抜粋しました。
このように、会計上、法人税法、消費税法での取り扱いが
異なる場合があるので、現場においては、十分な知見が
今後必要になってくると思われる。
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