共有持ち分の不動産貸付業は個人事業税に注意!?
不動産貸付業は個人事業税の対象となるのか?
個人事業税は、個人が事業を営む場合に課税されます。
そして、地方税の規定では、第1種から3種事業に分けて
個人に事業税が課せられてきます。
不動産貸付業は、第1種事業に列挙されるので、
アパートの貸付のみならず、駐車場の貸付も
個人事業税が課されることになります。
(地方税法72条の2)
所得税と地方税では違う判断基準になっている
実務上、不動産貸付業の事業的規模の判断は、
5棟10室基準という国税庁の通達で判断している
税理士が多いと思います。
個人事業性の場合には、不動産の貸付を業として
行うこと、つまり、反復継続して対価の取得を目的として、
不動産の貸付を行うことを言います。
不動産貸付業になるかどうかを認定については、
所得税の取扱いを参考としますが、規模、収入の状況、
管理状況を総合勘案して判断されます。
これが、地方税における通達になります。
具体的な規模の要件はこちら
上記の不動産貸付業と駐車場業の認定基準により
個人事業税が課されるかどうかが分かります。
上記も都税事務所による基準です。
東京では、以下の様な判断基準となっています。
・貸付用建物の総床面積が600㎡以上、かつ、
これから得られる賃料収入が年1,000万円以上の場合
・競技、遊技、娯楽集会等のために基本的設備を施した不動産
・一定規模の旅館、ホテル、病院など特定業務の用途に供される建物
こういった判断は都道府県によって異なっているため、
判断には注意必要となります。
(所得税法基本通達26-9、都税事務所ホームページ)
共有不動産は全体での判断になってしまうことも!?
通常、共有持ち分の不動産はその持分ごとに
所有者が所有しているものと考えて課税すべきである。
これは、所得税ではそのように計算して、確定申告を
している方も多いと思います。
しかし、上記について、東京地裁にて個人事業税の判断が
争われた事例だと・・・判決は、
「共有不動産が貸付けられている場合には、各共有者が
それぞれ独立に貸付を行っているものと認められるような
特段の事情がない限り、不動産の貸付部分の全部につき
全共有者が共同して一括で貸し付けているものと評価できるから
(中略)
東京都の事業的規模に関する通達は相応の合理性があるという
べきであり、これに基づいてされた各処分は適法である。」
(東京地裁判決平18.1.27)
要するに、事業税の課税対象と判断する不動産貸付業とは、
共有していたとしても、それぞれで独立して貸付けている
ような状況がないと共有不動産の全体で判断するという
ことになるわけです。
この判断の問題点は、例えば、貸室が10室以上でないと
個人事業税は事業的規模にならないため課税されないのですが、
アパート全体だと10室以上となるということは
起こりえるわけです。
2人の共有者であれば、5室ずつということになり、
事業税の事業的規模に該当しないため、個人事業税は
課税されないという考え方は間違っているということを
明らかにした判決というわけです。
ワンポイントアドバイス!
所得税の事業的規模の判断についても、同様に
共有者による持分按分は行いません。
したがって、10室以上のアパートを2人で所有という
ことであっても、10室以上との判断で、
事業的規模と判断して、青色申告特別控除65万円控除を
受けることができます。
これは、納税者に有利な判断なので、使ってみると
良いと思います。
以上の所得税と個人事業税の事業的規模の判断は
民法249条の規定により、行うことができます。
この記事は、この記事を作成してる時点の法令に基づき
書かれています。法令に改正があった場合には、現在の
取り扱いとは違った取り扱いになる可能性があります。