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本当は怖い!個人事業主の経費判断


仕事の経費か、家庭の費用か、どう処理する?

個人事業主では、仕事と家庭を生活に分けることが難しいものがあります。

例えば、事業用のオフィスを持たず、自宅兼事務所で事業をやっている場合などです。

こうしたケースでは、自宅が賃貸であれば、家賃から始まり、水道光熱費、電話代、新聞代、

自家用車の経費、といったものが一般的に上がってくるのではないかと思います。

 

それでは、こういったものはどう処理すればよいのでしょうか?

税務上の取扱いでは、次の様になっています。

 

1.家事費・家事関連費

家事費・家事関連費とはざっくり申し上げると、家庭の費用ということです。

ですから、原則、個人事業の経費になりません。

具体的には、上記で例示した費用は家事費・家事関連費として経費にならないということになります。

 

2.主たる部分が業務遂行上必要な場合は?

では、上記の家賃等の費用は業務遂行上必要かどうかというと・・・

オフィスがないと仕事できませんよね?

電話は最低限の連絡手段として業務に欠かせないでしょう。

といった具合に、業務遂行という理由をつけていくことで、経費性が出てくるわけです。

したがって、家事費・家事関連費であっても、業務遂行上必要で、かつ、

事業部分が明確に区分できれば、経費となるのです。

 

(所得税法37条、所得税法45条、所得税法施行令96条)

 

 

どうやって区分するの?

そうなってくると、家事費・家事関連費をどのように区分すればいいのか?

と考えることになります。

区分方法は、明確な基準はありません。

 

ただ、判断として・・・

「業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の

資産の利用状況等を総合勘案して判定する」とされています。

これが、現在の国側の考え方です。

 

納税者からすれば、明確な基準がないし、総合勘案するって言われても・・・

ということになってしまいます。

そこで、国側の一応の指針があります。

「主たる部分が(中略)業務遂行上必要かどうかは、その支出する金額のうち

その業務の遂行上必要な部分が50%を超えているかどうかにより判断する」となっていて、

「ただし、その必要な部分が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに

区分することができる場合には、その必要である部分に相当する金額を必要経費に

算入して差し支えない」としています。

 

言い換えると次の様になります。

1.業務遂行上必要かどうかの判断(第一フィルター)

家事費・家事関連費のうち必要な部分が50%を超えるのか→NO 2の判断へ

↓ YES

50%基準にて経費に算入する(事業と家庭で50%ずつ使ったと考えて経費計上する)

 

2.50%以下の場合(第二フィルター)

必要な部分を明らかに区分できるか→NO 家事費・家事関連費として経費にできない

↓ YES

必要である部分に相当する金額を必要経費として計上

必要である部分として、事務所部分の面積割合、営業時間割合、

車ですと事業としての走行距離割合などがあります。

 

(所得税法基本通達45-1、45-2)

 

 

 

ワンポイントアドバイス!

税理士によって色々考え方がありますが、要するに、

事業遂行上必要かどうかを説明できればいいのです。

できなければ、事業部分として抜き出せる部分を経費に計上するということです。

決して、科目や名目といったことで経費性が疑われたりはしません!

というか、できません!

具体的には、個人事業主で福利厚生費なんてありえない、

だから、全部家事費になると言って、否認はできないということです。

 

 

ただ、税務調査官によっても考えに違いがあり、方針は画一的ではありません。

例えば、祭日に行ったとした飲食店での会議費が否認された。

年に数回行っていた家族旅行のうち、1回分だけの旅行費用を経費に計上して、否認された。

ロータリークラブの会費は事業経費でないとして否認されたなど、否認事例は後を絶ちません。

 

実務上の留意点として、私は、画一的な法律の適用は避けるべきだと思います。

要するに、事業ごとに経費性は違ってくるわけです。

例えば、飲食店、クリニック、理容室などでは、待合席に雑誌が置いてあります。

ということは、雑誌の購入は直接的に事業経費になるので、そもそも50%の判断はいらないです。

全額必要経費でよいということになります。

 

八百屋であれば、商品の仕入れは当然経費としても、より良い野菜や果物を探しに

地方に行ったりする移動費用も考えられます。当然、地方へ探しに行った時には、

歓楽街等で飲食をする場合もあるでしょう。この場合の飲食費は事業遂行上必要かどうか?

という問題があります。

 

この様に、事業と家事費を画一的に線引きすることは容易ではありません。

したがって、納税者の感覚の世界になってくるわけです。

ですが、事業性について説明し、その根拠をしっかりさせておかないと、

税務調査にて経費を否認されるということになってしまいます。

 

 

 

 

この記事は、この記事を作成してる時点の法令に基づき

書かれています。法令に改正があった場合には、現在の

取り扱いとは違った取り扱いになる可能性があります。